GEfIL実践研究

実践研究は、PHASE1とPHASE2から成っています。
自身が関心を持つ地球規模で生じる「現実」の問題を対象として、創造的・学際的な研究プロジェクトを設計・実施することを目標とします。約1年半の主体的な学修を通じて、これまでに習得した基礎理論、分析方法、技術などを利用しながら、具体的な課題に取り組むことにより、論理的な思考による問題解決力を養います。
各学生は、ピース・ビルディング、グローバル・エコノミー&マネジメント、グローバル・ヘルス、ダイバーシティ*、サステイナビリティの大きなテーマ群の中で、研究課題を設定し、メンターの指導や助言を得つつ、研究プロジェクトを計画から発表まで実行します。
研究プロジェクトの企画・実施のサポートや、研究の進捗や問題点等について、学生同士やメンターのフィードバックを得るため、演習、ワークショップ、中間発表を定期的に開催します。


*2017-2018年度、2018-2019年度、2019ー2020年度にはダイバーシティに代わり、グローバル・エデュケーションが開講されます。
*2019ー2020年度よりグローバル・シティが開講されます。

GEfIL実践研究PHASE1(2年次12月~3年次5月)

PHASE1の主な目的は、学生が、異分野にまたがる既存の学問分野の枠を超える研究スキル、英語のコミュニケーション・プレゼンテーションスキル、およびチームワークコンピテンシーを身につけることです。 PHASE2で自分の研究プロジェクトに着手するときに、こうしたスキルを十分に保持している必要があります。
このため、PHASE1では、プロジェクトに基づく、焦点を絞った「足場かけ支援」の学習手法を採用します。 学生がGEfIL申請書に記載した「地球規模問題」について関心のある事項に基づいて、大規模なシナリオ(ケーススタディ)が用意され、これが学生の研究プロジェクトの枠組みになります。
地球規模問題は複雑で、通常、多様な知識と価値観を併せ持つエキスパートとの間で協同する必要があるので、 PHASE1の研究プロジェクトは、同様の関心を持ちながら異なる学問分野に所属する学生たちによる学際的チームで実施します。 チームとして、また個人として、学生は企画段階から知見のプレゼンテーションまで、「現実の」研究とは何を意味するのかを経験します。 各チームは、所定のシナリオの特定側面に対する解決策を研究し、それを提案して、他のチームと自分たちの考えを互いにディベートし、有意義な協同作業を通じて、様々なエキスパートや「利害関係者」の関心事(およびコメント)を考慮します。 このプロセスを通じて、知識を養い、アジェンダを設定し、行動・研究計画を構築、実行し、効果的な学際的チームワーク作業を行い、討議およびプレゼンテーションのスキルを駆使することを経験します。

この科目は、以下の2つの要素が、一組のらせん構造のように互いに関係する仕組みになっています。
1.分野の枠を超える各研究プロジェクトにおいてよく提起される一連の基本的疑問
2.構造化されたタスクを通じて学生が一貫して獲得する研究スキル


2023年ー2024年の講義予定は以下の通りです。(第9期生履修生向け:2023/7/21現在)

Workshop1  2023年12月  9日(土)13:30-16:30
Workshop2  2023年12月16日(土) 13:30-17:30
Workshop3  2024年 2月  3日(土) 13:30-17:30
Workshop4  2024年 2月17日(土)  9:30-17:30
Workshop5  2024年 3月23日(土)  13:30-17:30
Workshop6  2024年 4月  6日(土)  13:30-17:30
Workshop7  2024年 5月   (TBC)  9:00-18:00  Final Presentation

グローバル・ヘルス 東 尚弘 教授・稲田 晴彦 准教授

~~概要~~
グローバルヘルスとは、地球に生きる人々の健康水準をできるだけ効率的で公平な形で改善することを目指す科学と実践である。COVID-19パンデミックが世界中で問題となったことを一例として、グローバルヘルスの対象は必ずしも低中所得国に限らないが、世界の健康格差を是正するという観点から、健康水準が低い傾向にある低中所得国が特に重視される。また、人々の健康の決定要因は医学的・医療的なものに限られないため、非常に学際的な分野である。本コースでは、グローバルヘルスに関する概要を学んだあとに、各年度のトピックに沿って、その健康問題の現状や要因といった事実の把握、そして改善に向けた方策を考えていく。


(授業キーワード)

健康、公衆衛生、社会医学、予防医学、健康増進、健康の公平性/健康格差、健康の社会的決定要因



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グローバル・エデュケーション 勝野 正章 教授

~概要~
例えばCOVID-19パンデミックとウクライナの戦争を見れば明らかなように、子どもは容易に剥奪や疎外の対象となり、傷つきやすい存在である。同時に、子どもは自分自身と社会全体のより良いウエル・ビィーイングを享受する権利を持った主体的存在である。それゆえ、国連・子どもの権利条約が示すように、子どもの権利は保護と参加の両面を含んでいる。
子どもの権利条約は、1989年に国連総会で満場一致により採択され、米国を除くすべての加盟国によって批准されている条約である。国際合意である同条約は、国家に対し、非差別、子どもの最善の利益、生命・生存・発達への固有の権利、意見を尊重される権利を原則基づいて、子どもの経済的、政治的、文化的な諸権利を実現するよう要求している。
ケア、健康、教育、少年司法などの領域における一定の進歩にも関わらず、子どもの権利の実現は今日でも世界的課題である。この点、日本も例外ではなく、貧困、いじめ、ジェンダー・能力・民族・国籍に基づく差別などが子どもの権利実現を阻んでいる。つまり、子どもの権利はグローバルかつローカルな、学際的アプローチを必要とする課題である。 本実践研究の目的は、グローバルかつローカルな文脈において子どもの権利保障を進めるうえでの挑戦と機会を探究することである。その際、特に教育に関する諸権利に注目する。子どもの教育に関する権利は、教育への権利(平等なアクセスなど)、教育における権利(非差別、暴力やいじめからの保護、参加など)、教育を通しての権利(人間の権利と自由の尊重の実現)から成ると考えられる。本グループの参加者は、専門家による講義への参加、文献研究、グループ討議、選択したトピックについての研究を行い、得られた知見と子どもの権利保障をさらに進めるための提案を発表する。

(授業キーワード)
子どもの権利・子どもの最善の利益・教育への平等なアクセス・教育における非差別・国連子どもの権利条約

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ピース・ビルディング  キハラハント 愛 教授

~~概要~~
1990年代に平和構築の考え方が国連で提唱されてから数十年が経つ。このコースでは、「平和構築」とは持続的な平和を構築するための包括的な取り組みを意味することとする。

持続可能な平和には、主に2つの要素がある。1つは武力紛争の発生または再発のリスクが最小限に抑えられること、そしてもう1つは紛争の種を平和的に解決する機関や手段があるということである。このコースでは、学生は持続可能な平和に必要な要素を分析し、何が武力紛争の理由となるかを追及する。また、武力紛争の発生や再発を防ぐ方法を検討し、武力紛争と人権や開発との関係を考える。その過程で特に人権と正義との関係に留意することを推奨する。このコースでは実践的な研究を通じて、学生は下記について理解を深める。

1)武力紛争や世界の不安定な状況を含む問題、2)人権と持続可能な平和、3)正義、アカウンタビリティ、持続可能な平和、4) 構造的暴力、5)ジェンダー、6)平和活動、7)難民と移住、8)開発援助、9)治安部門、10)ローカルオーナーシップ、11)グローバルガバナンスと平和構築。

今年度のコースでは一つの例として東ティモールにおける移行期の正義を取り上げるが、履修学生は、平和構築の特定の分野やトピックを選択して自分独自の研究をし、研究結果に基づいて提言をすることができる。

(授業キーワード)
平和構築、平和、人権、開発、武力紛争、治安部門、移行期の正義

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サステイナビリティ 福士 謙介 教授・ガスパラトス アレクサンドロス 准教授

~~概要~~
社会を構成する最も小さな単位は個人である。 その個人のサステイナビリティは、家族、地域、社会、地球それぞれのサステイナビリティに大きく依存している。 個人の生活を守ること、地域社会を守ることは地球全体のサステイナビリティが確保されていないと達成されない。 サステイナビリティは様々なスケールで達成されるべきであり、そのような考えのもと、様々な開発計画、産業活動等が実行されていくことが理想的である。 本講義では世界の様々な地域で困難に直面している環境、健康、資源、開発、人材、産業、生活、文化、教育等の様々な事象をサステイナビリティの観点から見つめ直し、その解決策をともに考えていきたい。

(授業キーワード)
サステイナビリティ サステイナビリティ学 持続可能性 資源 環境 社会 地球

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AIと社会 板津 木綿子 教授

~概要~

人工知能を筆頭にデジタル技術の目覚ましい進歩は、30年後、どのような社会になっているか予測を難しくしている。歴史に耳を傾ければ、眼前に展開されているAI技術の普及は、間違いなく長期的な社会的影響を及ぼすことが自明である。AI技術は社会包括の実現に役立てるべきだという原則に導かれ、AIが経済的、政治的、社会的格差を強める可能性があることに着目し、その格差拡大に使われてしまう仕組みについて精査する。またAIを用いて社会正義を実現させるため、本テーマのプロジェクトとして、一般の人々のAIリテラシーを高める効果的な方法を模索する。



(授業キーワード)

人工知能(AI) 、人権、包摂、格差、差別、スティグマ


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