GEfIL実践研究

実践研究は、Phase1とPhase2から成っています。
自身が関心を持つ地球規模で生じる「現実」の問題を対象として、創造的・学際的な研究プロジェクトを設計・実施することを目標とします。約1年半の主体的な学修を通じて、これまでに習得した基礎理論、分析方法、技術などを利用しながら、具体的な課題に取り組むことにより、論理的な思考による問題解決力を養います。
各学生は、ピース・ビルディング、グローバル・エコノミー&マネジメント、グローバル・ヘルス、ダイバーシティ、サステイナビリティの大きなテーマ群の中で、研究課題を設定し、メンターの指導や助言を得つつ、研究プロジェクトを計画から発表まで実行します。
研究プロジェクトの企画・実施のサポートや、研究の進捗や問題点等について、学生同士やメンターのフィードバックを得るため、演習、ワークショップ、中間発表を定期的に開催します。

GEfIL実践研究Phase1(2年次12月~3年次5月)

Phase1の主な目的は、学生が、異分野にまたがる既存の学問分野の枠を超える研究スキル、英語のコミュニケーション・プレゼンテーションスキル、およびチームワークコンピテンシーを身につけることです。 Phase2で自分の研究プロジェクトに着手するときに、こうしたスキルを十分に保持している必要があります。
このため、Phase1では、プロジェクトに基づく、焦点を絞った「足場かけ支援」の学習手法を採用します。 学生がGEfIL申請書に記載した「地球規模問題」について関心のある事項に基づいて、大規模なシナリオ(ケーススタディ)が用意され、これが学生の研究プロジェクトの枠組みになります。
地球規模問題は複雑で、通常、多様な知識と価値観を併せ持つエキスパートとの間で協同する必要があるので、 Phase1の研究プロジェクトは、同様の関心を持ちながら異なる学問分野に所属する学生たちによる学際的チームで実施します。 チームとして、また個人として、学生は企画段階から知見のプレゼンテーションまで、「現実の」研究とは何を意味するのかを経験します。 各チームは、所定のシナリオの特定側面に対する解決策を研究し、それを提案して、他のチームと自分たちの考えを互いにディベートし、有意義な協同作業を通じて、様々なエキスパートや「利害関係者」の関心事(およびコメント)を考慮します。 このプロセスを通じて、知識を養い、アジェンダを設定し、行動・研究計画を構築、実行し、効果的な学際的チームワーク作業を行い、討議およびプレゼンテーションのスキルを駆使することを経験します。

この科目は、以下の2つの要素が、一組のらせん構造のように互いに関係する仕組みになっています。
1.分野の枠を超える各研究プロジェクトにおいてよく提起される一連の基本的疑問
2.構造化されたタスクを通じて学生が一貫して獲得する研究スキル

2016-2017年度 GEfIL実践研究Phase1 開講日程

  • 第1回2016年12月17日(土)
  • 第2回2016年12月24日(土)
  • 第3回2017年1月7日(土)
  • 第4回2017年2月4日(土)
  • 第5回2017年4月1日(土)
  • 第6回2017年4月15日(土)
  • 第7回2017年4月22日(土)
  • 第8回2017年5月13日(土)Final Presentation

GEfIL実践研究Phase2(3年次9月~4年次5月):2016~2017年度

ピース・ビルディング  藤原 帰一 教授 

~~概要~~
どのようにすれば、武力行使で引き裂かれた世界に安定した平和をもたらすことができるのだろうか。 国際紛争と内戦を含め、現代世界において展開する武力行使を対象として取り上げ、その発生する原因を解明するとともに、紛争解決の条件、紛争後の政治秩序形成や法制度形成、さらに再発防止のための措置、そしてまだ紛争が起こっていない地域における予防外交について考えることがこの実践研究の目的である。 この実践研究においては(1)内戦と国際紛争の現状、(2)宗教と紛争、(3)民族と紛争、(4)貧困と紛争、(5)テロとテロ組織、(6)介入と占領、(7)難民支援などの基本的事項について理解を深める一方、具体的な紛争を選び、その紛争における平和構築に関して自らの研究プロジェクトを実行しなければならない。 ここでは、ただ特定の紛争について事実関係を祖述したり、あるいは特定の領域における研究のサーベイをするのではなく、そのような研究と具体的な紛争の理解を結びつけ、これまでにない新しい視点を発見することが目的である。

(授業キーワード)
平和構築 紛争処理 平和維持活動 難民支援 ナショナリズム 民族とエスニディティ
Peace building; Conflict resolution; Peace-keeping operation; refugee assistance; nationalism; nation and ethnicity

~~自己紹介~~
肩書きは法学政治学研究科教授です。 といってもわかりにくいでしょうが、法学部、大学院の法学政治学研究科、そして公共政策大学院で、国際政治と国際紛争の授業を担当しています。 ここでとりあげる平和構築というテーマは、これまでの国際政治学とは違う課題です。 国際政治は国家と国家の関係を対象とするのが通常ですが、それ国家が領土と国民を統治する力を持たない破綻国家(failed state)などと呼ばれる状況はどうに理解すればよいのか。 この極限的な問題について、スーダン、イエメン、ソマリア、そしてリビアとシリアなどの具体的な事例を踏まえて考えていきましょう。  


グローバルエコノミー&マネジメント  藤本 隆宏 教授

~~概要~~
世界中のどのような大舞台に立っても、その実力を余すことなく発揮できる人材の育成を目指す。 世界経済の成長点の大きな変化やその反面での不安定さの増大など、今日の大組織が直面する課題の多くは、その解決のためにグローバルな視野やその力学の理解が不可欠な時代となっている。 なかでも、企業経営を支えるイノベーションやコアコンピタンスの蓄積・活用も、もはやこうしたグローバルな力学の理解抜きには考えらない。 日本の多くのグローバル企業がどのようにこうした課題に取り組んできたか、そこでの苦闘を具体的に取り上げることを通じてこれからのグローバルエコノミーの本質を探ることに挑戦する。 そこでは、企業戦略のみならず、組織のありかた、リーダーシップ、そして企業人としての生き方に至るまで新たなものが求められてくるだろう。 本授業では、参加学生の知的関心と今後の職業選択まで含めた進路についての意識を尊重し、いくつかのグループによる集中的な活動を通じて、成果の取りまとめを行う。 グローバルな視野を備えた、逞しい(経営)リーダーとして成長するための視野と姿勢を身に着けることを目標としたい。

(授業キーワード)
世界の経済勢力図、グローバル企業経営、日本の競争力、イノベーション、コアコンピタンス、(経営)リーダーとしての生き方

~~自己紹介~~
東大経済学部3年のときに1年休学して米国東部の大学に行き、米国中を見て歩きました。 4年の時は農村調査で長野県と千葉県の水利組織の実態調査をしました。 大学院へは行かずサラリーマンを数年やり、地域の造船所や欧米自動車工場の現地調査をやりました。 縁あって休職して米国東部の大学に戻り、世界中の自動車製品開発チームの現地調査をやり、技術・生産管理の博士号をもらい英語の本を書きました。
 その後脱サラで東大の教員になりました。 学内に「ものづり経営研究センター」を作り、学外の地域や産業や企業や現場の人たちと頻繁に共同作業をしています。 先月は授業の合間に12の国内現場や中小企業を実態調査しましたが、他方で世界各地の大学との国際共同研究や海外学会での講演なども続けています。
 こうした試行錯誤の経験から、「ローカルに強くなければグローバルで通用しない」というのが持論です。 皆さんにも、たとえば昨日は現場の監督連中と真剣勝負で議論して一目置かれ、今日は国際会議を仕切り大きな流れを作って一目置かれる、というような人になってほしいです。 21世紀はそういう人を必要としています。


グローバル・ヘルス  渡辺 知保 教授

~~概要~~
グローバル・ヘルスの課題は多様だ。 一方に世界の様々な地域が固有に抱える多様な健康問題があり、他方で地球上の人類にとって共通の健康問題がある。 同じように見える課題でも途上国と先進国では様相が変わる。 別の角度から眺めれば、臨床と予防という医療の範囲にとどまらず、人口・環境・社会・食糧(農業)・開発・持続可能性など多くの分野と接点を持つという意味においても極めて多様性に富んでいる。 こうした意味で健康に関する課題は、多角的な視点と斬新な発想を育てる良いプラットホームと言えよう。 本テーマ群では、グローバル・ヘルスの領域における課題と様々な隣接領域との接点を学生が自ら見出し、グループ・ディスカッションによって課題解決のための有効な取り組みを探るものとする。 可能な範囲で、世界における健康問題の実態に触れる機会を設けたい。
 受講生は、現状のグローバル・ヘルスの中でどのような問題が扱われているのかを把握した上で、眠っている課題や解決の困難と思われる課題を同定する。 その上で実際にどのような取り組みが行われているのか、取り組みに欠けているもの・必要なものは何なのか、取り組みの成功・失敗はどのような領域にどのようなインパクトを与えうるのかといった疑問を、できるだけ多角的に、多くの要素のつながりを重視しつつ検討することを修得する。

(授業キーワード)
健康の概念 感染症 非感染症 人口問題 食糧問題 栄養状態 環境問題 気候変動適応策 人為的生態系 医療支援 都市インフラ 開発

~~自己紹介~~
医学系研究科国際保健学専攻の人類生態学分野教授を2005年より務める。 サステナビリティ連携機構・EDITORIA機構を兼担、ASNET機構ネットワーク長。 学位は保健学博士(1991年,東京大学)。 毒性学、なかでも金属毒性に興味をもち水銀・ヒ素などの毒性に関して実験的研究を行い、金属毒性に対する感受性の個体差の原因、栄養素とりわけ必須微量元素の栄養状態による毒性修飾などの問題をてがけてきた。 特に、化学物質の毒性あるいは微量元素の栄養状態が、生体(集団)のおかれたさまざまなコンテクストによって大きく変わる機序とその実際的な意義に興味を持っている。 また、毒性と栄養の問題を中心に,アジアの様々な国でフィールド調査も行ってきた。 主要な調査としては、バングラデシュおよびネパール低地における地下水のヒ素汚染の問題、インドネシア・ベトナムなどを含むアジア・オセアニアの複数国における生業転換と健康—環境との関連の解析、さらに近年は、地球観測データと健康データとを融合して気候変動などに起因する“地球規模”の健康課題の解決策に貢献するというプロジェクトも手がけている。


ダイバーシティ  園田 茂人 教授

~~概要~~
文化の多様性を理解・尊重し、これを(多国籍)企業や行政機関、NGOなどで具体的な組織的行動に移すことのできる人材の育成を目指す。 経済のグローバル化の進展は、一見すると「文化のフラット化」を生み出しているようだが、実際にはそうではない。 組織・集団や民族・エスニシティー、国家などに具体的に体現される文化は、歴史の母斑を残しつつも、その差異と関係性がダイナミックに変化する状況にあって、異なる文化を抱えた人びとの協働を促し、新たな価値実現のための具体的な行動を起こすことが、今まで以上に求められている。 本授業では、参加学生のさまざまな知的関心と問題意識を尊重しつつ、いくつかのグループをもとにした集中的な議論や活動を通して、最終成果のとりまとめまでの作業を行う。 多文化状況を理解する知性と感性、これを具体的なアクションプランにまで落とし込む忍耐力と集中力、これを実現するための説得力と行動力の涵養が目標となる。

(授業キーワード)
文化の多様性 協働 新たな価値実現 アクションプラン

~~自己紹介~~
21世紀の声を聞いてから、海外の研究者との共同研究がめっきり増えた。 毎年十数回の海外出張をこなすようになったから、ひと月に一度、海外出張をしている計算になる。
 変化は研究面ばかりではない。教育面での海外との連携も飛躍的に増えた。 2000年から2009年までの9年間、中央と早稲田で、それぞれ学部と大学院を中心に授業を担当したが、海外の大学と合同セミナーを毎年開催し、150名以上の学生(パートナー校を含めると500名を超える)と一緒に学んだ。
 2009年、母校に戻ると、所属先の大学院には留学生ばかりで、ほとんど日本人学生がいなかった。 そのため、日本人学生を海外大学の学生と交流させる機会がめっきり減ってしまった。 そこで、国際本部管轄の台湾大学や香港大学との合同サマープログラムを作ったり、文学部で出講して学部生を中心に「アジア学生調査第二波調査」を企画したりして、学生たちの力量を確かめた。
 本学の学部生は、磨けばまだまだ光る。 しかし、海外の学生と切磋琢磨する学習機会が圧倒的に少ない。 学内の大学院生や留学生の力も借りて、「ダイバシティ」をめぐる刺激的なセミナーを運営したい。 意欲ある諸君の参加を望む。


サステイナビリティ 福士 謙介 教授

~~概要~~
社会を構成する最も小さな単位は個人である。 その個人のサステイナビリティは、家族、地域、社会、地球それぞれのサステイナビリティに大きく依存している。 個人の生活を守ること、地域社会を守ることは地球全体のサステイナビリティが確保されていないと達成されない。 サステイナビリティは様々なスケールで達成されるべきであり、そのような考えのもと、様々な開発計画、産業活動等が実行されていくことが理想的である。 本講義では世界の様々な地域で困難に直面している環境、健康、資源、開発、人材、産業、生活、文化、教育等の様々な事象をサステイナビリティの観点から見つめ直し、その解決策をともに考えていきたい。

(授業キーワード)
サステイナビリティ サステイナビリティ学 持続可能性 資源 環境 社会 地球

~~自己紹介~~
福士謙介は国際高等研究所サステイナビリティ学連携研究機構の教授であり、工学系研究科(都市工学)、新領域創成科学研究科(サステイナビリティ)の大学院を担当している。 国連大学サステイナビリティ高等研究所の客員教授もつとめている。
 福士教授は土木工学者であり、サステイナビリティ学連携研究機構の創設メンバーの一人として、世界のサステイナビリティ学をリードしてきた。 福士教授はSustainability Science誌の編集顧問、Asian Pacific Network for Global Change Research (APN)の科学委員(日本代表)、アジア工科大学名誉教授に任命されている。 専門とする研究分野は環境工学、環境と健康、都市農村問題、水の環境科学、サステイナビリティ学である。 福士教授は学士と修士(いずれも土木工学)を東北大学から、博士の学位を米国ユタ大学(土木工学)から授与されている。